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アラブ系
エッセイ / TAKAHIRO AKIBA
  私はその容姿的特長ゆえか(?)、よく「アラブ系」と言われることがあります。「アラブ系」の人々といえば、面長で目鼻立ちが非常に濃く、少し厳しげな表情の中に仄暗い神秘性を湛えた容姿が印象的な方々が多いように思いますが、そのような要素を自分が何かしら放っているのだとすれば、これに優る幸いは無いと言えましょう。

 しかしながら、私にとって「アラブ」というキーワードは、まさに私自身の想像的ファンタジーをかき立てる重要な要素に他なりません。もちろん、私はアラブ人を親戚に持つ身でも、イスラム教徒でもありませんが、どうしたわけか、アラブ(広義において、この言葉に含まれる意味は、一言で統一できるものではなのですが)、更にはイスラームの芸術(音楽や美術)や原語(文字や言葉の響き)に遠く仄暗い「魂のざわめき」を感じる人間であることは確かです。そもそも、当時、船乗りであった私の祖父は、アラビア海を幾度と無く渡り、クウェート、イラク、バーレーン、ヨルダン、サウジアラビアなどの国々を度々訪れていましたから、祖父がその目を通して見、その肌を通して感じてきたものが、魂の鎖を伝わって、孫である私の心にも刻み込まれたと考えることもできましょう。あるいは、私の魂の遍歴の過程において、かつてアラブ人として世に生を受けていたという可能性も大いにあるでしょう。いずれにしても、私独自の芸術観や美学に、アラブ的な何かが大きく影響していることは確かです。

 高校時代に購入した「アラビアの音楽〜砂漠のアラベスク」(キングレコード)を初めて聴いた時の衝撃と感銘は、今なお心に深く刻み込まれています。なかでも、遊牧民であるべドウィンたちに伝わる民謡を歌うイブラヒーム・アブドゥラー氏の名唱、カーヌーン奏者ハサン・アル・シャカルチ氏によるタクスィームなどは、私を恍惚とした永久の記憶へと導いてくれます。また、イラク出身のウード奏者である巨匠ムニール・バシール氏のアルバムも私の愛聴盤です。ウードという単旋律楽器によって語られる彼の深遠な演奏芸術は、西洋の壮麗なオーケストラ音楽をも遥かに凌駕する内的精神力を有していると感じます。この他にも、「アラブ音楽コレクション」と銘打って様々な音源資料を秘蔵(?)していますが、またいずれ、それら一枚一枚についても何か書く機会があればと思います。

 そしてもう一つ、私には「愚かなる野望」があります。それは、「アラブ圏諸国への演奏旅行」です。もちろん、現在でも、一部の国家周辺の治安情勢は未だ緊迫した状況にあり、そのような中で、私のこのような一見悠々とした夢を語ろうものならば、「邪道なり!!」と一喝されてしまうかもしれませんが、しかし、私にその音楽の力をもって感銘を与えてくれた敬愛する彼らとともに、音を通して語りあいたいと願う気持ちは、音楽家としてごく自然なことであり、正しいことだと思っています。

 今尚、武器を手にして目を血走らせながら、尊い人々の命を奪うことを厭わずに盲進する者たちが、ふとその戦いの眼差しを己へと向けて、彼らの遠い祖先たちが築き上げてきた偉大な文化、真の精神性、そして何よりも人々の「愛」を守りぬくことにこそ、民族の誇りを掲げることへの真意があるのだということを悟り、宗教や国家を超えた他者への思いやりの精神を持って、自らの魂の精進に励んでくださることを心から願うばかりです。
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